目次

世界のことばアラアルト(第4回) - 大分県青年海外協力協会 > みんなの交流広場

大分県出身,在住のJICA(ジャイカ)国際ボランティア帰国隊員による、組織と活動の紹介ブログ。壮行会,講座,イベント出展,現地レポートなど。赴任・活動環境や派遣前訓練、現職,短期,シニア等の募集制度、倍率,給料,就職の実態。

記事一覧

ホーム > みんなの交流広場 > 世界のことばアラアルト(第4回)

世界のことばアラアルト(第4回)

世界のことばアラアルト(第4回)
ひとつのことばで言えるもの
 突然ですが、英語で「牛」はなんと言うでしょうか?この辺のことは獣医師である私にとっては専門分野なのですが、意外と難しいものです。学術的な文章ではラテン系のbovineと言う単語をよく使います。一時世間を騒がせた狂牛病のBSE(Bovine Spongiform Encephalopathy)のBがこれです。もっともこのbovineと言う単語は形容詞的に使うことが一般的です。包括的に「牛」を意味する名詞としてはcattleという単語があり、肉牛とか乳牛とか言う時はbeef cattle とかdairy cattle とか言います。でも、今そこにいる「牛」を示すにはその成長のステージや役割によって様々な呼び方があります。子牛はcalf、お母さん牛はcow、お父さん牛はbull、おかま牛(去勢牛)はox、若いピチピチしためすはheifer、肉になってしまえばbeefと言った具合です。確かに英語では、家畜や動物に関する単語は細分化されているような気がします。今、流行の「女子会」も英語に訳せばhen party と言ったところでしょう。これもhen=雌鳥と性が規定されているから作られることばであると考えられます。ちなみに雌鳥に対して雄鳥は辞書で引くとcockですが、男子会なるものかあってもcock partyとは言わない方が良さそうです。米国では、cockと言う単語は卑語として使われるとことが多いからで、単に雄鳥を示す時もcockは使わずroosterとすることが多いようです。
このように日英の単語を比較してみると、日本語では○○牛とか○○鶏とか単語を継ぎ足して言わないと言えないものを英語ではひとつのことばで言えることが分かります。これは決して、英語の方が分析的で、語彙数が多いからと言うわけではありません。逆に出世魚であるセイゴ、フッコ、スズキ(呼び方は地方によっても違うでしょうけど)を英語で言おうとすれば、small sea-bass、medium-sized sea-bass 、large sea-bassとなり、日本語でひとつのことばで言えることも英語ではことばを継ぎ足して言わなくては言えないと言うことになります。今例に挙げた牛・鶏と魚のように、ひとつのことばで言える語彙が多い分野はその文化(肉食中心だった英語圏文化vs魚食中心だった日本)で関心が高いことと言っても良さそうです。聞いた話ですが、韓国では色に関する語彙が発達していて、単に色チャートのどこにあるかを示すだけの表現ではなく、「悲しい青」と言った感情も含めた色表現があるそうです。この辺のこと、詳しい人がいたらご投稿お願いします。
 さて我が任国フィリピンでは、日本でははっきり区別している概念が結構ひとくくりだったりします。例えば、(舌で感じる)おいしいと(身体で感じる)気持ちいいは同じ単語masarapを使います。「身体」の範囲は想像にお任せしますが、シャワーを浴びた後のフィリピン人や○○のときのフィリピン人が「masarap」と言うのを聞いて「何か食べたの?」と感違いした外国人は多いと思います。だからと言ってフィリピンの語彙が未分化だというわけではありません。人が持つと言われている5感、すなわち、眼耳鼻舌身あるいは色声香味触のうち、例えば良い、心地いい感覚をひとことで言えるかというと、日本語では舌で感じる良い情報をおいしいとひとことで表現できますが、他の感覚については美しい音、とかいい匂いと言ったようにことばをつなぎあわせて表現します。いっぽう、フィリピンでは、嗅覚についても、いい匂い(mabango)、臭い(mabaho)といずれもひとつのことばで表すことばできます。
 ひとつのことばで言える単語が多い少ないかにより、その言語を使う文化の関心の高さを示すとすれば、フィリピンのことばで面白いと思うのが姉妹兄弟を示すことばです。日本語では、同じ父母から生まれた人たちについて、自分より年長か年少、そしてそれぞれの性の違いによって。姉、妹、兄、弟とそれぞれひとつのことばで言い表すことができます。いっぽう、フィリピンのことばでは、姉はate、兄はkuyaとひとことで表すことができますが、自分より年下の弟や妹を示すことばはありません。(もちろん兄弟姉妹全般を示すkapatidと言うことばに若い、男のということばをつなぎ合わせれば弟のこととして表現はできます。)しかし、bunsoということばがあり、これは、男女にかかわらず末っ子を示します。一方、お兄さん、お姉さんについては、それらをもっと細分化すれば、ate、kuyaは一番上のお兄さん、お姉さんであり、2番目、3番目のお兄さんはそれぞれdiko、sangkoと呼ばれ、2番目、3番目のお姉さんはite、santeと呼ばれます。これら、2番目や3番目を示すことばは、3番目がsanで始まることから分かるように、中国語からの借用のようです。いずれにしても、少子化が進む我が国では発達し得ないような単語です。
 兄弟姉妹の呼び方で面白いと思うのは、それらを分ける時の優先順位です。英語ではこれらをまず性で分け、brother、sisterとし、ここまではひとつのことばで言うことができます。これらをさらに細分化して、自分より年上か年下かを言おうとすれば、それぞれにelderとかyoungerとかをつなげる必要があります。一方、タイ語ではまず自分より年上か年下かでpii、nongと分けます。それらをさらに性で分ける必要がある時にはそれぞれにchai(男)、saaw(女)を付けます。(世界のことばアラカルトを前から読んでくださっている方ならご承知と思いますが、タイ語では、形容詞が後ろから来るのでお兄さんならpii chaiと言った具合になります。)タイでは、喫茶店のウエートレスのように名前を知らない人を呼ぶ時に、この、年下の兄弟姉妹を示すnongを使って呼びます。日本ならおじさんが若い娘を呼ぶ時でも「お姉さん!!」とかと言って呼びます。相手が年下なのだから「妹!!」と呼んだ方が親近感が湧きそうですが、なぜか日本語では、実際の兄弟姉妹のなかでも「お兄ちゃん」、「お姉ちゃん」とは呼びかけますが「妹」、「弟」とは呼びかけないですね?南こうせつの歌では「妹よ」と呼びかけていますが・・・。(古い歌で恐縮です)。
 さて、今回は冒頭に英語での動物の呼び方の話題がでたので、動物に関わるクイズを出して今回の稿を閉じようと思います。
クイズ)50頭の雌豚と50頭の雄鹿を合わせると何になるでしょう?
答え)10万ドル
解説)one hundred sows and bucks → one hundred thousand bucks
sow→雌豚  buck→雄鹿という意味と共にU.S.dollarの俗語でもある。
63/2 フィリピン 長岡 健朗

トラックバック一覧

コメント一覧